談話・見解

内閣総理大臣と厚生労働大臣あてに「新型コロナウイルス感染症対策に関する第二次緊急要請書」を提出しました

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 4月17日、福祉保育労は、内閣総理大臣と厚生労働大臣あて「新型コロナウイルス感染症対策に関する第二次緊急要請書」を提出しました。3月5日に提出した「新型コロナウイルス感染症対策に関する緊急要請書」に続く、第二次要請書になります。

 感染症の予防、感染者が出た場合の対応、休業や閉所への対応にかかわる内容です。引き続き、現場の実態を把握し、必要な要求を、経営に、国・自治体にあげていきます。

 ※内閣府・厚生労働省は、2週間前にFAX等で示さないと文書を直接受け取ることをしないため、4月初旬に文面を両省の窓口の担当者に示し、17日に文書を手渡して提出したものです。したがって4月7日の緊急事態宣言発出等に伴う対応についての記載はできていません。

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2020年4月17日

内閣総理大臣  安倍 晋三 様
厚生労働大臣  加藤 勝信 様

全国福祉保育労働組合   
中央執行委員長 土田 昭一

新型コロナウイルス感染症対策に関する第二次緊急要請書

 貴職におかれましては、日頃から国民の福祉向上にご尽力いただいておりますことに感謝申し上げます。
 さて、新型コロナウイルス感染症対策に関しては、3月5日付で、学校の一斉休校にあっても「原則として開所すること」が求められるなかで、社会福祉事業の施設等ではさまざまな不安と混乱が起きているとして、貴職に(1)感染症の予防、(2)感染者が出た場合の対応、(3)休業や閉所への対応の3点にわたる緊急要請書を提出いたしました。
 その後、感染症の世界的な流行が拡大するなか、3月19日には新型コロナウイルス感染症対策専門家会議から、「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」が出されました。提言では、「社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にする」として、①密閉空間、②密集空間、③密接空間の「3つの条件が同時に重なった場」を避けるとりくみの必要性を強調しています。具体的には、①換気の悪い密閉空間にしないための換気の徹底、②多くの人が手の届く距離に集まらないための配慮、③近距離での会話や大声での発声をできるだけ控えることを求めています。
 しかし、「原則受け入れ」を求められている社会福祉施設・事業において、こうしたとりくみを可能とするための記述は、「高齢者や持病のある方に接する機会のある、医療、介護、福祉ならびに一般の事業者で働く人は一層の感染対策を行うことが求められます。発熱や感冒症状の確認ならびに、感染リスクの高い場所に行く機会を減らすなどの対応が当分の間求められます」とあるのみで、具体的な指針となる内容はありません。実態としては、その対応が現場任せになっており、自治体によっても対応が統一されていない状況にあります。これでは、現場での混乱がますます大きくなってしまいます。
 また、休校への対応に際しては、必要な職員体制の確保が困難で福祉労働者の労働強化による心身の疲弊が起きています。一方で、雇用主から感染症対策としての休業を要請されたにもかかわらず、賃金保障がされなかったり、年次有給休暇での対応が求められたりといった事例も報告されています。政府が打ち出している休業保障などについて、雇用主・労働者ともに十分な周知がされていないことも、その要因のひとつであると考えられます。
 さらに、政府から福祉施設にマスク等が郵送され始めましたが、十分に行き渡っているとはいえず、配布対象から外れてしまう施設・事業があるなどの問題も起きています。

 このような問題は、職員配置や施設に関する基準が現場の実態に即していないという脆弱な現行の社会福祉制度が背景にあります。根本的な問題解決には、社会福祉制度の抜本的な改善・充実が必要であることを指摘しておきます。
 そのうえで、こうした問題を早急に解決するために、あらためて以下について第二次の緊急要請をいたしますので、速やかな対応をお願いいたします。

(1)感染症の予防に関して
①マスク、手指消毒器、防護服等、感染予防の医療資材を、自治体と連携して地域生活支援事業等も含めたすべての福祉施設・事業を対象に配布すること。
②職員の感染防止と健康対策を徹底するように、事業所を指導すること。
③重症化するリスクが高い妊娠中の女性職員、高齢・基礎疾患のある職員が休みやすい環境を整えるために、代替職員の確保について措置を講じること。
④社会福祉施設や保育所等での感染拡大防止の観点から、利用者・職員が速やかに医療機関で検査を受けて入院・治療が受けられるように、自治体と連携して地域医療体制を確保すること。
⑤自治体と連携して、都道府県に福祉関係者(利用者・家族・事業所など)が相談できるワンストップ専門窓口を設置すること。

(2)感染者が出た場合の対応について
①利用者・家族や職員等に感染者が発生した場合の社会福祉施設や保育所等での対応についてガイドラインを示すこと。そのうえで、利用者の人権と生活を守る視点に立ち、関係機関が連携した対応ができるよう国と自治体が責任を持って対策を講じること。
②入所の社会福祉施設等で感染者もしくは感染が疑われる利用者が出た際、施設内で隔離する場合は必要な人的・物的支援を国の責任で行うこと。また、一律に隔離させるだけでなく、関係機関が連携して柔軟な対応ができるよう自治体に指示すること。
③国の責任で自治体と連携して施設の消毒等にあたるとともに、すべての利用者・家族と職員を対象に速やかに検査を実施し、安全を確保するための措置を講じること。

(3)休業や閉所への対応について
①感染もしくは感染が疑われ、また自らの子育て等のために勤務できなかった職員に対して、公費で休業補償をおこなうこと。医療機関での検査を受ける前に、自主的に判断して休業した職員についても保障の対象とすること。また、事業所の責任において休業させた場合は、職員に対し休業手当を支払うよう通達などで周知・徹底すること。
②扶養家族として健康保険に加入している労働者が感染して休業した場合も傷病手当金の支給対象とすること。
③休業や子育て中の職員の休暇に伴う代替職員の確保のための措置を講じること。
④社会福祉施設等が、休業や閉所をおこなった場合でも、職員の雇用を守り賃金を保障するために、事業所に対して、通常の報酬や委託費を支給するなど融資でなく公費による直接の助成をおこなうこと。

⑤社会福祉施設や保育所等で、感染もしくは感染が疑われる、または予防のために利用者が休んだ場合や事業所の要請により利用を控えた場合でも、事業所に損失が出ないように、予定されていた報酬や委託費を支給すること。

(4)2021年度の報酬改定をはじめ、報酬や委託費に関して
 新型コロナウイルス感染症対策で明らかになったように、社会福祉施設や保育所等で利用者の命と安全を守るためには、現状の職員配置では不十分です。また、平時から職員確保ができないことも障害となっています。この状況を改善するために、以下の点について要請します。
①災害時や感染症流行時でも、利用者の命と安全、人権が守れるように、社会福祉施設や保育所等の職員配置基準を抜本的に引き上げること。また、国から「原則受け入れ」と通達されるほど社会福祉事業は必要性・公益性が高い事業なので、平時から安定した経営ができるよう介護・障害の報酬単価を日割単価から月額単価とすること。
②また、長年の課題となっている人材確保問題を解消するために、賃金の大幅な底上げが可能となるよう報酬額(公定価格)や委託費を引き上げること
③感染症対策においても福祉避難所としての機能を果たし、また平時から利用者や職員の保健衛生対策を充分に行えるよう職員配置や補助制度の拡充を図ること。また非常時に必要な設備やスペースを確保するためにも、施設設備基準の規制緩和を改めること。

以 上

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◇内閣総理大臣と厚生労働大臣あて「新型コロナウイルス感染症対策に関する第二次緊急要請書」(全国福祉保育労働組合2020年4月17日 PDFファイル)https://www.fukuho.info/wp-content/uploads/2020/04/20200417.pdf

 

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