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【談話】「社会福祉法等の一部改正法案」の参議院可決に抗議する

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 3月23日、政府提出の「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が参議院本会議で可決されました。社会福祉法人の制度の見直しにとどまらず、憲法25条に基づく権利保障としての社会福祉事業の本質を歪めてしまう懸念があることなど、多くの社会福祉関係者から疑問や懸念が表明されていたものです。福祉保育労としてこれに抗議する書記長談話を発表しました。

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【談話】「社会福祉法等の一部改正法案」の参議院可決に抗議する

2016年3月23日 
全国福祉保育労働組合
書記長 澤村 直

 政府提出の「社会福祉法等の一部を改正する法律案」(以下、「同法案」)は、本日の参議院本会議において、日本共産党・社会民主党以外の賛成多数で可決されました。法律番号部分の修正がおこなわれたため、衆議院に戻されたのち可決・成立となる見込みです。同法案は、単に社会福祉法人制度の見直しにとどまらず、憲法25条に基づく権利保障としての社会福祉事業の本質を歪めてしまう懸念があるなど、多くの社会福祉関係者から疑問や懸念が表明されていました。それにも関わらず、参考人質疑も含めてわずか3日間の審議だけで拙速な採決がおこなわれたことに対し、福祉保育労は厳重に抗議します。

 そもそも、同法案は2015年7月の衆議院での審議および参考人質疑において、社会福祉事業は非営利組織で運営されるのが望ましいこと、いわゆる「内部留保」の定義が定まっていないこと、「地域貢献活動」の「努力」義務化は国の責任で制度化しておこなうべき事業を社会福祉法人に転嫁するものであること、などが明らかとなっていました。また、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の公費助成対象から介護分野に続いて障害分野を外すことは、福祉人材確保とは正反対の施策であることも指摘されていました。
 参議院での審議および参考人質疑においても、社会福祉法人に、いわゆる「内部留保」(余裕財産)がどれだけ存在するのかについて現行のしくみでは把握できないこと、すでにおこなわれている社会福祉法人の公益的な事業の実施状況も把握できていないことが明らかとなりました。また、退職手当共済制度の公費助成対象から外れることによる経営への影響についても試算されていません。同法案の立法事実そのものが存在しないとまで指摘されたことに対して、政府からはまともな答弁は一切おこなわれませんでした。衆議院での審議と同様に、一方で社会福祉法人の公益性・非営利性を強調して規制強化を図るとしながら、他方では多様な主体とのイコールフッティングを理由にして規制緩和をおこなうという矛盾した説明を繰り返すばかりでした。
 同法案の厚生労働委員会での採決に先立っておこなわれた討論では、賛成する党からの討論は一切なく、可決後に15項目もの附帯決議が付けられました。これだけの附帯決議が付けられたこと自体が、同法案の社会福祉事業に与える影響の大きさを示しています。

 福祉保育労は、この間、憲法25条に基づく権利保障としての社会福祉事業を守り拡充させようと、社会福祉事業の経営者、利用者・家族、福祉労働者の立場を越え、また、介護・障害・保育などの分野を越えて、福祉関係者の幅広い共同運動をすすめてきました。
 この共同をさらに広げて、附帯決議に盛り込まれた「社会福祉事業を担う人材の適切な処遇の確保」や「労働関係法令の確実な遵守」、「職員の処遇の実態の適切な把握と、人材確保のための必要な措置」、「均等・均衡待遇の確保」などに、実効性のある措置を講ずるよう政府に迫る運動を展開し、国民の福祉要求に応える制度の構築に全力をあげる決意です。

以 上 

【談話】「社会福祉法等の一部改正法案」の参議院可決に抗議する(PDFファイル)
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