談話・見解

子育て支援員創設の厚労大臣提案の撤回を求める(談話)

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 5月28日の産業競争力会議の会合で厚生労働大臣が「子育て支援員」(仮称)の創設を提案したことに対し、福祉保育労は6月3日付で書記長談話を発表し、その重大な問題点を伝えるとともに提案の撤回を求めました。

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子育て支援員創設の厚労大臣提案の撤回を求める(談話)

2014年6月3日

全国福祉保育労働組合 書記長 澤村 直

 5月28日、田村厚生労働大臣は、政府の産業競争力会議第4回課題別会合において、子育て支援員(仮称)の創設についての提案をおこなった。2015年4月施行予定の子ども・子育て支援新制度において、小規模保育等が新たに法律に基づく給付・事業となって人材確保が必要となることが提案理由となっている。  福祉保育労は、この提案が、「保育士の専門性を否定する」、「保育士等の配置基準の抜本的引き上げを阻害する」との2点の理由から強く抗議するとともに、提案の撤回を求める。

 提案では、「育児経験豊かな主婦等が、国が示すガイドラインに沿って都道府県又は市町村等が実施提供する研修を受けて修了すれば、『子育て支援員』として認定し、小規模保育等の保育従事者等として従事可能とする」としている。  保育従事者として子どもの命を守り発達を保障するためには、専門的な知識を身につけたうえで、入職後も現場実践を積み重ねて専門性を磨くことが不可欠であり、だからこそ保育士は名称独占の国家資格とされている。育児経験と保育施設での経験は全く異なるものであり、20時間程度の研修を受けただけの育児経験者を保育従事者とすることは、保育士の専門性を否定していると言わざるを得ない。 保育労働が家事労働の延長とみなされて処遇が低く抑えられてきたことが人材不足を生み出し、人材確保には処遇の大幅改善が必要であることは与野党でも一致するところであり、待機児童解消を望む保護者団体からも処遇改善を求める声があげられている。そうしたなかでの子育て支援員の創設は、保育労働を家事労働の延長に引き戻し、結果的に専門職としての処遇改善を妨げることになり、さらなる人材不足を招く。

 また、提案には、子育て支援員を乳児院・児童養護施設・放課後児童クラブの補助員として従事させることも含まれている。しかし、保育所も含めたこうした児童福祉施設では、保育士等の配置基準が現場の実態とかけ離れた低い水準に留まっていることが問題なのである。現場に必要なのは、配置基準を抜本的に引き上げて専門職としての保育士等を実態に合わせて配置することである。子育て支援員による補助員配置は、専門職の代替との位置づけにつながり、配置基準の抜本的な改善を結果的に阻害する。

 今回の提案が、保育現場の実態を把握していない産業競争力会議の民間議員からではなく、保育・子育てを所管している厚生労働大臣から出されたことは、この間、厚生労働省が小規模保育で保育士配置基準を引き下げたことをさらに押し進める極めて重大な問題であり、到底容認することはできない。さらに、産業競争力会議の民間議員からは、「(子育て支援員の)保育所での活用についても検討すべきである」との意見も出され、保育士配置基準の定数の一部を子育て支援員で代替することに道を開く危険性があることも指摘しておく。

 福祉保育労は、政府が6月に策定するとしている成長戦略にこうした提案が盛り込まれることのないよう強く要請するとともに、待機児童解消とすべての子どもの発達権保障のために、保育労働者の処遇改善による人材確保施策と職員配置基準の抜本的な改善を求める運動を、多くの保育関係者とともに進めていく決意である。

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◇参考資料(厚生労働大臣による「子育て支援員」提案文書)  
 産業競争力会議課題別会合(5月28日) 資料「女性が輝く日本」の実現に向けて
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/kadaibetu/dai4/siryou3.pdf

 

◇PDFファイル
子育て支援員創設の厚労大臣提案の撤回を求める(談話)

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